公開講座第3回「魂の管楽器、開発・製造ストーリー」レポート

芝浦工大2020秋の公開講座「脳が喜ぶ〜音楽とテクノロジーの関係〜」第3回は「魂の管楽器、開発・製造ストーリー」と題して、オンラインで実施、100名を超える参加者で大盛況でした。

講師の福田徳久さんは「金管楽器、中でもトランペットの開発を長年担当してきました。現在は、管楽器全般の商品戦略を取りまとめる業務に携わる一方で趣味の演奏活動も精力的に行っています」とおっしゃる、まさに管楽器界の「中の人」です。

参考リンク→世界の一流奏者が愛用するトランペット「Xeno Artist Model」がモデルチェンジ」

講義は、管楽器の原理や歴史を、専門用語の解説も入れながら丁寧に説明いただきました。代表的な演奏例として紹介されたYouTube/Facebookのリンクです。

LA Phil & Gustavo Dudamel – Williams: Theme from “Jurassic Park” (Live at Walt Disney Concert Hall)
第25回浜松国際管楽器アカデミー&フェスティバル「オープニングコンサート」よりスーザ 雷神Sousa The Thunderer

・Yamaha Wind Stream – ヤマハ・ウインドストリーム【Z EXPRESS BIG BAND】Spain feat.中川英二郎(tb) Facebookページにリンクします。

管楽器の一番の魅力は「楽器に息を吹き込むことで、人の体と密接な関係を築き、まるで歌うように演奏できる」こと。人馬一体ならぬ人・楽器一体を実感できる楽器というところが大きな特徴であり魅力ということです。それに加え、音量の大きさ・ダイナミックレンジ、合奏の楽しさ、難しいが故の奥の深さ、といった点も管楽器の魅力を増しています。

管楽器の基本は円筒管(ストレート管)と円錐管(テーパー管)の組み合わせ。これが楽器の基本となるということで、福田さん自らの演奏で「Trumpet(円筒部分が長い)」「Cornet(中間)」「Flugelhorn(円錐部分が長い)」を聴き比べ、円錐部分の比率が大きいほど柔らかく太い音に変化していくことがわかりました。

休憩の間には、歴史で紹介されたナチュラルトランペットの演奏、エリック・ミヤシロさんのリモートビッグバンドの演奏紹介もありました。

後半、同じクラシック音楽でも演奏される時代と指揮者、演奏者によって大きく進化、変化していることをべートーベン交響曲5番第4楽章を聞いて納得しました(1947年フルトヴェングラー指揮、1970年カラヤン指揮、2015年ラトル指揮)

開発とは、こうした進化、変化をアーティストや学生など顧客のニーズをにらみながら製品に反映させること。なかでも一流アーテストとの共同開発は、100%満足されるまでとことんやり抜く強い信念と技術力、信頼関係が必要だということが本音を交えて語られました。難易度の高い仕事をラーメンにたとえることで思わずわかったような気になる、ニコッとする瞬間でした。

製造の説明では、バーチャル工場見学としてYouTubeの紹介があったので埋め込みます。

Q&Aのコーナーでは、管の曲げ方(お湯で溶ける金属を使って曲げるって??)や、材質や製法による音色の違い、また最近話題のデジタルサックスなど多彩な質問が出て、全部に回答する時間はなかったものの非常に有益なインタラクティブセッションとなりました。

今回は、Zoomを使ったオンライン講義ということで、オーディオ性能の限界から、生の管楽器の音の響きや迫力などが伝わりにくかった面はありますが、日本全国から受講者が参加くださり、集合講義とは違ったメリットもありました。

今年で2回めの「音楽とテクノロジー」シリーズ。今後集計されるアンケートの結果も見ながら来年以降どうするか考えていきたいと思います。