リレーBLOG第9弾「過去の道と私的成長モデル」

こんにちは、芝浦MOT8期の田邉です。
立教MBA修了の妻と、小3、小1、年中の娘を持つ、ITコンサルタントです。

さて、本稿では新結合という言葉に反応するMOTの方々に、私自身の過去歩んできた道をご紹介し、今後どのような新しい結合を実現させていくべきかを、一緒に考えていけたらと思います。私は、公私混同上等な性格なので、仕事もプライベートも区別なく、自分の興味のあることを軸に進んでいきたいと思っています。新しく結合させることで生み出されるもの、その可能性を探っていきます。
「ずっと探していた理想の自分ってもうちょっとカッコよかったけれど、ぼくが歩いてきた日々と道のりを本当は自分っていうらしい」と、スガシカオとかいう人が歌っていますが、まずこれまでの道を確認して、その後それらをどう結合させていくかを考えます。

まずはざっと、道を描いてみました。一つ一つの道を見ていきます。


1. 役割と成長:【理系→SE→MOT→ITコンサル】

第一の道は「役割と成長」の道。小学生という役割の中で小学生として成長し、中学、高校を経てやがて理系の道に進みました。そしてソフトウエアによるものづくりに平坦な道を彩らせる可能性を感じました。でも少し進むと、思ったほどの景色が広がらず、そんな時MOTという道を見つけます。MOT修了後はシステムを作るのみでなく、より上流にとコンサルティングという道を選びました。

振り返って、この第一の日々と道のりでは自身の限界や得意なことを考慮し、最も活躍できる役割を求めて、歩んできたと思います。その中で一つ気づいたのは、様々な物や事象、人の意見や感情などを組み合わせて整えて一つの何かを作るということはわりと得意な方かもしれないということです。
MOTの理想化設計で最高評価を頂いたとき、私がやったのは個性豊かな同級生のあふれんばかりの思いの詰まった文章を、バッサバッサと切って落としてから、先生のインストラクションに合うようにきれいにつなぎ合わせることでした。またSEとコンサルに共通するプロジェクトマネジメントには型があり、培った経験と実績によってその型を利用しながら課題管理や進捗管理、スコープ定義を行なうことが出来るようになり、未経験のプロジェクトであっても臆することなく進めることができるようになりました。
ずっと金融とテクノロジーの道を進んできましたが、それは金融業務の真ん中にある道ではなく、収集であったり取りまとめであったり、或いは業務効率化であったり、システム開発であったり、バリューチェーンでいうところの支援業務を担ってきました。
今までは、誰かの思いを支援し導く役割を多く担っていたと思います。

そして今、会社の中では、自分たちのビジネスを広げることと、後進の成長に貢献することを求められています。このまま進むべきか、一旦立ち止まってよく考えるべきか、そのヒントが他の道にあることを信じて、ひとまずここで立ち止まってみます。

2. 探究心と人生:【自分って何?→幸せって何?→MyData(パーソナルデータの利活用)】

人の生について考え始めたのは、恐らく物心ついた頃から。自分って何だろう、ヒトは死んだらどうなるんだろう、人生とは何だろう、このような哲学的な疑問と共に、本やテレビで紹介される社会に対して素晴らしい功績を残した先人達への憧れが新たな道を作り出しました。

幸せって何だろう、個人と社会の関係性を意識するようになっていたのは大学生の時。幸せが何かという問いに答えはないけど、人と人、あるいは社会との関係性、繋がりの中に幸せがあることを知りました。飲み会では2次会、3次会になると、普段見せない人の本質的な部分が出てきてすごく面白かったことを覚えています。

少し話は変わりますが、システム開発では共通のロジックを外出しして、保守性を高める方法が長年研究され、適用されています。私はSEで学んだそれをコンサルではビジネスプロセスに適用していきました。そして似たようなことをパーソナルデータで実現させることを、何の役割も与えられていないのに、社外活動として始めました。まるで探求心が独り歩きし始めたように。

元々かなりの面倒くさがりの私は、「一度登録したデータを二度国民に入力させない」という考えを持つエストニアの電子政府を知り、また情報銀行については、その言葉がまだ世の中にそれほど出ていない2017年頃から注目していました(情報銀行(information bank) – ノート上のお話 (goo.ne.jp))。
MyData(MyData Japan)という団体を知ったのはそうした道を歩いているときで、今では社外活動として積極的に取り組んでいます。近年のAIブームとGAFAによるパーソナルデータの寡占状態から次の時代へ、プライバシー保護や消費者本人を中心としたパーソナルデータの利活用は益々重要なテーマとなってきました。
ここには二つの文脈が混じっています。データ連携による省力化と個人の人生を豊かにするためのデータ活用です。今後これら二つを考えていくことが、私自身の非常に重要なファクターとなると確信しています。

さて、私が今直面している問題は、第一の道からパーソナルデータの道が見えないことです。二つの道が交わる場所がこの先すぐあるのか、ずいぶん先になるのか分かりませんが、少なくとも独立した道を歩んでいくのはそろそろ限界と感じています。

二つの道を見てきましたが、全く先が見えなくなってしまい困ってしまったので、さらに他の道を見ていくことにします。

3. 趣味と創造性:【歌と音楽とモノづくり】

この道は、「探究心と人生」の道から枝分かれし、自由になりたいと曲がりくねり、私を見てと主張する。
広い草原を進むトンボは、その道とは全く関係なく旋回し夕陽を横切るが、妙に懐かしさを感じるその光景に、幼い頃の自分を重ねた。最初は細いその道を歩いて、薄暗い森を抜けると、やがて眩しい海が広がってくる。
鳥は歌が好きなのか、それとも人がそう思っているだけなのか、童話の世界のように動物に歌を歌わせ仲良く演奏する姿を想像して、その中にある現実世界とのつながりを模索していく喜びを感じながら、私は歩いていく。
想像することは曲を作るだけでなく、表現することは歌を歌うだけでなく、一見合わせることが出来ないと思えるものを組み合わせることで、新しい価値を生み出すことが出来ると信じて、ただそれだけでは何の意味も持たない文章を、形を崩さないように一つの物語にする。

詩(詞)は出来るだけ説明をせずに、直感的に分かる、感じる、訴えかけるように書きます。これは右脳の役割。
コンサルは論理的思考力を大切にします。文章はロジカルに分解し、関係性を説明します。これは左脳の役割。
説明を付けるのが難しくなったら、感性に身を任せ、しばらく進んでからまた関係性を検討し始めるのが良いと思います。そんなことを繰り返すことで、何か新しいことが見えてこないか、どちらかだけではなく、共に関係しあってそのうちにスパイラルを形作り、昇っていく渦を作ることは出来るだろうか。

そのカギを握るのは、きっと次の第4の道なんだと思います。なぜならこの道が出来てから、私の目に見える景色はすっかり変わってしまったからです。

4. 縄張りと社会的価値:【結婚→子ども→日本ダウン症協会(JDS)とD&I(Diversity & Inclusion)】

最後に枝分かれした道は、「縄張りと社会的価値」の道。この道がはっきりと現れてきたのは恐らく結婚してからです。
この道は夫やパパという役割を与えられて成長するように第一の道に似ています。人によっては第一の道の中に含めることもできるのかもしれないですが、私の中でははっきりと分かれていて、第一の道よりもずっと感覚的なもの、直観的なものと捉えています。
ロジカルに説明することが難しく、妻とは何となく気が合いますし、私の価値観では子どもは無条件に愛するものです。もうこれは最初から決まっていて、それに合わせて世界が回っているという感じです。
この大切な道の両脇には、季節を彩るたくさんの花が広がっていて、とても綺麗で素敵な草花たちは、たくさんの喜びを与えてくれます。

次女がダウン症だと分かったときも、実は全く道は暗くなりませんでした。茨や暗さは本当に皆無で、綺麗なお花畑がただただ続いているだけでした。いつも違和感を感じることがあります。
それは、ダウン症を授かった家族が最初落ち込んで、徐々に受け入れて行き、今では幸せです、安心してください、みたいなストーリーです。そのような道を歩むのがきっと普通なんだと思いますが、我々は最初からお花畑で、すごく自然に受け入れていました。そして今でもそれは変わらない。私たち家族はみんな同じ感覚を持っていると思います。

次女が小学校1年生ということもあり、ここ最近インクルーシブ教育に興味を持ち始めました。支援学校判定の次女は現在、普通級で様々な人に支えられながら過ごしています。自分たちで教材を用意して学校側とも定期的に面談を実施しています。次女はiPadでアプリを使って言葉を覚え始めたので、SE時代に得た知識を使って最近私も教材を作り始めました。
日本の教育制度はインクルーシブからかけ離れていて、もちろんそれに異を唱える人はたくさんいて、少しずつ良い方向に向かってはいるものの、そのスピードはカタツムリほど遅いように感じます。いつになったら400m先のあのゴールに着くんですか~?という感じ。
なので、日本の学校あるいは社会をインクルーシブ教育へ導いていくという活動も、障害のある子を授かったある種の義務のようなものなのかもしれないと思っています。子どものためにもなるからと、日本ダウン症協会の活動にも参加し始め、SEやコンサルでの経験を元に、社会的価値を作り出すことに邁進しています。

■私的成長モデル

4つの道を描いたものの、なかなか結論にたどり着けない。困りながらも文章を書き進めていくと、ふとあることに気が付きました。4つということは何か軸を2つ決めて4象限で表せないだろうか。
これを思いついたのは「3. 趣味と創造性」の道を考えているときです。やはり思い付きは自由な発想をしているときに出てくる。軸はすぐに思い浮かびました。右脳と左脳、義務と権利です。


第一の道では今、金融機関を相手にテクノロジーコンサルティングをしています。
プロジェクトマネジメントやシステム開発、IT戦略を立てるための各種調査や、戦略そのものを考えること、ガバナンスやルール整備なども行っています。
金融系ITコンサルから、金融機関へ移るのも一つの道だとは思っています。コンサルに居ながら、新しいチャレンジをしていくのもできるとは思いますが、どのようなチャレンジが良いのか遠い道のりのように感じています。
並行してMyDataの活動を精力的に行っていますが、第一の道との関係性を作れないことに悩んでいます。パーソナルデータに関するプロジェクト、という漠然としたものだとそもそも仕事を取りに行けない。もちろんトレンドではあるので、各プロジェクトはそれに全く関連しないとも限らないですが、関連の少ないシステム開発やガバナンス整備をしていると、第一の道との距離は遠ざかるばかりです。

本稿は一つのきっかけになるかもしれないと思っています。
なかなか交わらない4象限をぐるぐる回って考えていくことで、新しい道が見えてくるのではないかと。
MyDataと日本ダウン症協会、あるいは家族、コンサルティング業界、金融業界、音楽やモノ作り、これらはそれぞれに目的を持っており、無理やり結びつけるのは違うと思っていますが、それでも、今までになかった可能性を探っていくこと自体は続けていきたいと思います。きっと一人で考えるだけでは難しくて、色んな人との出会いや活動の中で少しずつ育まれるものだと思っています。


最後になりますが、思いつく限りこれからの道のヒントになりそうなことを列挙していきたいと思います。今年はこれらを深く考える年にしたい。

ダウン症はアートとの相性がいい。障害者の職業やマネタイズの仕組みの検討、あるいは教育分野。障害者こそAIの恩恵を受けるべきという意見もあります。
金融に絡むところだとパーソナルデータをもとに、遺言とか、後見人制度とか、親亡き後の暮らしとか、資産をどう障害のある家族に残すか、という文脈もあると思います。
またD&Iはパーソナルデータとの相性がいいと個人的には思っています。大量生産・大量消費時代を経て、Deep Learningの登場に伴い個人に合わせたサービスが次々と出てきている中で、多様性を尊重しマイノリティが生きやすい世の中を作っていくことはすごく自然な流れです。
だけど、過去に作られた制度がそれを邪魔する。
制度を変えるには論理的説得力が必須で、MOTやコンサルで培った力が役に立つ。
力を入れるべき先は、家族やインクルーシブ、社会的な制度の充実。日本ダウン症協会の活動はまだ始めたばかり、MyData活動もD&Iと絡めてもっと自分事として動けるようにしていきたい。役割と成長は、後からついて来い。


まとまったのかまとまってないのか、よく分からないですが、大学の軽音楽部卒業時の寄せ書きで、ある先輩が書いてくれた言葉を何故か今思い出しました。

「そのまま行け」

たった一言でしたが、とても心に響いたのを今でも覚えています。

2022年もこのまま行きたいと思います。本年が皆様にとっても実りあるものになることを願って、本稿を締めたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。