リレーBLOG第10弾 『パワービルダーの家づくりビジネス戦略』 を日刊工業新聞社から出版

1期生の小平和一朗です。5期生の西河洋一(現 MOT支部長)とともに『パワービルダーの家づくりビジネス戦略』の編集を担当しました。企画から出版までに3年かかりました。本年(2022年)4月8日に日刊工業新聞社から出版することができました。

<図1 『パワービルダーの家づくりビジネス戦略』の表紙>

さて、「パワービルダー」とは何かご存知でしょうか。国土交通省はパワービルダーについて「一次取得者層をターゲットにした比較的小規模な分譲一戸建住宅を低価格で販売する不動産業者」と定義しています。西河が実質的に創業したアーネストワンは、パワービルダーと言われる各社の牽引役を果たしてきました。

出版企画をするきっかけとなったのは、3年前に鈴見建夫芝浦工業大学理事長(当時、エスアイテック社長)から「『安くて、早い』という悪いイメージを払拭するには、家づくりのコンセプトや、マネジメント手法や、工法を整理すべき」とアドバイスを受けたことからです。そのようなご縁もあって、出版にあたっては、推薦の辞を書いていただくことができました。

2000年にアーネストワンの社長に西河が就任した時の売上は54億円でした。13年後、同業の6社を統合し、飯田グループホールディングスを設立し、飯田グループホールディングスの社長に就任する2013年のアーネストワンの売上は2千億円を超えていました。13年間で40倍に近い成長を実現させました。西河は「芝浦MOTで学んだことが、経営をする上で役立っている」といっています。どのような技術経営を具体的に取り組んだかを知りたいと思いませんか。本書は、そのノウハウを、アーネストワン内の審査を経て、可能な範囲の内容を本書に整理することができました。

アーネストワンの成長の裏には、コンセプトがあり、ストーリーがあり、明確な経営戦略があります。まさに、戦略と戦術が明確になっていることで、組織的総合力を発揮しています。

同書では、数値事例をあげて具体的に説明しています。広さ98㎡程度の4LDKの住宅、駐車場付きの戸建を購入すると月々の住宅ローン返済額は、おおよそ9万円です。一方、首都圏のアパートは、広さ、50~70㎡のアパートに住み、家賃8.6万円、管理費・駐車場代は別です。どちらに魅力を感じるでしょうか。(図2)住宅を購入しますと月々の支払いは借入の返済であり、自分の資産を増やすことになりますが、家賃の支払いは大家さんへの支払いで、自分の資産を増やすことにはなりません。

<図2 賃貸と購入のどちらが得か>

販売価格戦略をモデル化すると図3のように表せます。モノづくりの改善の積み上げで、常識を覆すような安価な住宅を提供することができるようになりました。従来の価格では、購入できなかった顧客層の潜在需要の掘り起こしをして、作れば完成前に契約が取れる住宅づくりができました。急速な市場の拡大の背景には、機能、性能に優れた安価な住宅の提供ができたことにあります。具体的な実現方法については、同書に書かれていますのでよろしくお願いします。

<図3 ターゲット戦略と消費者階層>

家づくりのモノづくりから、土地取得からビジネスがはじまる不動産業というコトづくり(サービス業)に事業を転換しました。(図4)モノとコトを融合したビジネスに取り組みました。分譲住宅販売という新たな事業のサプライチェーンの時間軸を最少化し、キャッシュフローが正の循環をするようにコントロールし、現金が社内に貯まる仕組みをつくりあげました。工期の短縮で同じ人財を活用してできる仕事を増やしました。

「在来木造軸組工法」を採用し、日々の改善の積み重ねで製造原価を引き下げ、価格競争力をつけました。競合他社と異なり、モノづくりを大工に任せることをしませんでした。自らモノづくりの改善やシステムづくりの改善に取り組み、業界に先駆けてCAD化、プレカット工法の採用とデジタル化(DX)、スピードビルド(SPEEDBUILD)で工期短縮などに取り組みました。

<図4 製造業からサービス業にビジネスモデルを変更>

YoutubeのSPEEDBUILD(2019京都)では、24時間で完成させている動画をみることができます。是非、ご覧ください。

自ら考えた原価を引き下げるアイディアを実践し、安全で効率的なモノづくりを実現しています。大工仕事の工業化が進みました。

高く土地を買って、安く住宅を販売するビジネスモデルに取り組みました。アーネストワンの強みは、日本一安いといわれる製造原価にあります。他社の追従を許さない大きな原価差にあります。土地を購買することができています。さらには、安価に住宅を販売しても、予定した利益を確保することができるようなビジネスとして組み立てられています。

 土地の仕入れの入り口と、出口である戸建住宅の販売戸数で勝つことができました。ピーク時には、家が完成する前に70%の契約が入りました。パワービルダーと言われる所以がここにあります。表1 をみてください。このビジネスモデルのように、土地相場700万円の土地を800万円で100万円高く買うことで競争力を高めました。製造原価が安いからできる技です。詳細な説明は、ぜひ同書をお読みください。

<表1 住宅販売価格の原価構成>

 本書は、家づくりについて書かれていますが、技術経営を学ぶ研究者にとっては、具体的な事例に基づく分かりやすい経営書です。技術経営マネジメントの理解が進みます。業界を越えて応用できるノウハウが満載です。購入して頂き、会社の仲間と議論して、貴ビジネスに取り組み、実用化してください。 

図5は、東京駅前OAZOにある丸善の3階の専門書コーナーに並べられた『パワービルダーの家づくりビジネス戦略』です。

<図5 東京駅OAZOの丸善3階の専門書のコーナー>

<図5 東京駅OAZOの丸善3階の専門書のコーナー>

コメントを残す